
美容師として独立開業するにあたって、祖父母の家が建っていた土地の半分を使って美容院をつくろうとしたのが始まりです。もともとは店舗だけの予定だったのですが、子どもの成長を見据えると住宅との一体型がいいのではないかと考えるようになりました。それまで住んでいたマンションで音の問題などが気になってきたこともあって…。子どもが自由にのびのびと遊べるよう戸建て住宅で暮らしたいと思い、店舗併用住宅をつくることにしたのです。
阿部建設を選んだのは、阿部建設の協力会社である建具店を営む父からの紹介です。実は僕の実家も阿部建設が手がけており、慣れ親しんできた安心感もありました。ただ、この機会にほかもいろいろ見て回ろうとハウジングセンターにも行きましたね。妻と「こういう間取りもあるんだね」「この造りもいいね」と話しながら参考にして、阿部建設のモデルハウスも訪ねた上で依頼することにしました。

店舗づくりで大切にしたのは“誰でも入りやすい”ことです。幹線道路から一本入った立地ながらも入りやすく通いやすい、親しみの持てる雰囲気にしたいと考えました。要望として、小さなお子様と一緒に通えるように「キッズスペース」を設けること、そのキッズスペースの近くまでスタイリングチェアを移動できるように大きな鏡を設けることを挙げました。可動式のチェアをどこに動かしてもお客様のお顔が映るように、幅の広い鏡を採用したかったのです。
店舗内は木目を多用した、親しみやすく落ち着ける空間をイメージしていました。しかし、天然木を用いたくても、美容院には木材を使用できない箇所があります。開業するには保健所の立ち入り検査があり、床の素材、イスの台数に応じた接客スペースの面積、明るさ、換気など、店内の構造や設備に関する細かな基準をすべてクリアしなければなりません。床材については、水や薬剤がこぼれ落ちるため、それらが染み込む素材は使えないのです。シャンプー台の周りも同様で、水や薬剤が染み込まない素材を用いる必要があります。こうした箇所には、木目がプリントされた、水などに強い素材を選ぶことにしました。木を使えるドアにはレッドシダー、鏡台にはナラ、窓枠にはヒノキ、カウンターにはナラとレッドシダーを選んでいます。
開業に向けて検査の基準に合うかどうかは、阿部建設の担当の中村さんが保健所とやりとりしながら確認して進めてくれました。要件を守りつつ、どれだけ希望に近づけられるかが店舗づくりのポイントでしたね。

オープン後、実際に使い始めて気に入っているところは受付カウンターです。駐車場側に大きな窓を設けたので、受付にいるとお客様が到着したらすぐに分かりますし、別の面には小窓があって明るさも十分です。カウンターは造作で、作業がしやすい高さになっていて機能的。手元が隠れる造りも気に入っています。
また、キッズスペースが好評なんですよ。中にはこれをWebサイトでご覧になって来店される方もいらっしゃり、集客にも役立っています。

住まいについては、“木そのものを感じられる家”が希望でした。自分自身が幼い頃から木にふれて育ってきたように、子どもたちにもそうやって成長してほしいと思っています。これまではなかなか木を感じることができませんでしたからね。妻の希望としては、キッチンに広いカウンターを取り入れること、洗濯する際の動線をスムーズにすることなどがありました。
家づくりで悩んだのが間取りです。最初は、2階建てにするか3階建てかで迷いました。2階建ての場合、必要な部屋数を確保しようとすると駐車場のスペースが取れなくなるため、結果的には3階建てに。その3階は子ども部屋を2つ設けたのですが、2部屋を同じ広さになるようにどうレイアウトするか、そしてバルコニーをつくるか屋根にするのかも、検討を重ねたポイントです。選んだのは、20畳ほどあるバルコニー。コンセントや水道も備え、布団を干したり、子どもたちが夏にはプールで遊んだりできるようにしました。広くて開放感があり、今ではわが家の“庭”のような存在になっています。
阿部建設からの提案で印象的だったのは、リビングにあるオリジナルのスペースです。空間を上下に分けて、下半分は高さ1メートルぐらいの納戸に。もともとはこの納戸だけだったのですが、収納スペースはほかに十分あるので小さくしました。小さくした分、「余ったスペースはどう使おうか?」と話し合う中で、中村さんが高さ1.2メートルほどの畳敷きの小部屋を提案してくれたんです。内部には本などを置けるカウンターがあって、絵本を読んだり、ブロックで遊んだりできるほか、親子でごろんと横になって過ごせる、この家ならではの場所になりました。自分ではまったく思いつかない空間の活用方法ですね。

このオリジナルの場所が、住まいでの僕のお気に入りですね。くつろげて多目的に使える畳の間をつくってよかったなと思っています。
妻はキッチンが広く使いやすくなり、作業効率がいいと喜んでいます。背面の長いカウンターに調理器具などを並べられるし、パントリーなどもあって収納力も抜群です。
やはり木の家での暮らしはくつろげますね。床材は無垢のナラで、僕や息子は毎日素足でその心地よさを満喫しています。妻の希望だったコンパクトな動線については、室内干しができるように脱衣室を広く取り、乾いたら畳まずに干した状態のまま掛けられるウォークインクローゼットを設置しました。脱衣所の広さやクローゼットの位置を何度も検討し、機能性を高めています。

店舗と住まいはそれぞれ建物が独立しているわけではなく、中でつながった造りにしています。最初の打ち合わせでは“壁”があり、分ける予定でしたが、長期優良住宅の要件を満たすにはつなげる必要があるとのことでした。もともと建物を分けようとした理由は、子どもが小さいので店舗に入ってくるかもしれないと考えたからですが、建物の境目に扉を設けて鍵を付けることで解決しました。建物がつながっていると天候に関わりなくスムーズに移動できるため、結果的によかったと思いますね。台風でも雪でも濡れたりせずに美容院へ行けますし、もし急用があった場合も簡単に行き来ができます。
店舗併用住宅にしたことで、子どもの顔を見られる機会や時間が増えました。仕事をしていても、学校から帰ってきた姿が窓越しに目に入るので安心しますね。もちろん通勤時間もかかりませんから、仕事が終わるとともに家族と過ごすことができます。
今後の展望は、店舗については認知度を高め、より多くのお客様に親しまれる美容院にしていくことです。住まいについては、子ども部屋をまだ使っていないので、子どもがもう少し成長したら一緒に家具選びをしたいと思っています。部屋を気に入って活用してもらえる日を楽しみにしています。
もしこれから店舗づくりを始めるなら、まずは開設に関わる決まり事やルールを知ることから取り掛かるとよいと思います。理想をカタチにしようとしても、建物や設備の要件を満たしていなければ実現できませんから、あらかじめ知識を得ておくことが望ましいといえます。美容院はシンプルな方だと思いますが、飲食店となると要件がもっと多いようです。また、提出すべき申請書類もけっこうあって手続きに時間がかかるため、オープンまでのスケジュールに余裕を持たせるのも大切です。なるべくゆとりを持って準備を進めるとよいのではないでしょうか。
